地産野菜を徹底的に使い切る
地域と繋がるロハス・スタイル
最近、うまいものを求める以上に店主と話しがしたくて店に足が向くことが多くある。
「反りが合う」男というのはいるものだ。
そういう男とこそ話すべき内容の話というものがある。
『インド家庭料理ラニ』はちょいと行きづらい場所にある。
それでも行くのは話しをしたい男が待っているからだ。
タンドールを使わないこの北インド家庭料理の店にナンはない。
インドでは家庭にはタンドールは設置しないからだ。
論理的で真面目なオーナーシェフ、ハリオムさんらしさが見える。
Aランチをもらった。
まずサラダが素晴らしい。
野菜がシャキッとしているのはいい野菜を丁寧に扱っているという証拠、価値がある。
ブラウンレンティルの豆カレーが実に味わい深く好みの味。
チキンバターマサラは日本人が好む甘く深いコクで口に入れると思わず破顔する。
ジャガイモとタマネギのサブジもシンプルで食感良く思わず唸る味。
揚げパンのバトゥラは驚くほど大きく膨らんでいた。
マトンカレーも注文。
ハリオムさんは羊ではなく骨つき、チルドのヤギ肉を使っているのだと胸を張る。
インド料理でマトンは本来ヤギが正解、味わいが違うのだ。
シンプルなスパイスと繊細な調理で食材の良さを最大限引き出してある。
最近はビリヤニを出す日があるとも聞き及び、願い叶って出てきたのが見たことのない白いビリヤニ。
これはハイデラバードスタイルだそう。
グレイヴィ(カレーソース)が底に敷いてあるという初めて見るものであった。
何を隠そうハリオムさんはインド、タージホテルグループで要人向け調理を担当、それもビリヤニの専任であった時期がある。
インドの一流ホテルでも通常提供がされないスペシャルなひと皿。
驚くべきメニューがさらりと出てくる。
強すぎない、必要な分だけがきっちり仕事を務めるスパイス使いに心震える。
「これもどうぞ」とさらりと作ってくれたチーズカレー。
固める前のパニール(カッテージチーズ)をソースに使ったもので、こんなもの他のレストランで見たことがない。
マイルドで脂は抑えめ軽やかだ。
自店でパニールを作る店ならではのメニューに驚いた。
こんな面白いものを繰り出してくる男と話して面白くないわけがない。
タージのインド料理はフレンチの影響を大きく受けているなど興味深い話を聞きながら時間がたちまちすぎてゆく。
わたしは一次産業や地産地消の大事さなどを彼に語る。
大きな頷きが帰ってくる。
ここの野菜がきちんとおいしいのは、近くで畑をやっている方から買っているから。
農家さんはレストランで使ってくれるのがうれしくて、近所のお客さんはあの畑で取れた野菜がこれか、と納得して料理を食べる。
楽しいサイクルがハリオムさんを軸にぐるぐると回る。
楽しい中に正義がある。
なんという豊かな店だろう。
「Aランチ」(1180円)、「マトンカレー」 (1458円)、「ビリヤニ」(2000円)。各種飲み物、アルコールもそろう。料理教室も開催。
[ インド家庭料理ラニ ]
住所 神奈川県横浜市都筑区東山田2-3-1
電話 045-534-6890
交通 横浜市営地下鉄グリーンライン北山田駅 徒歩13分
営業時間 11:30~15:00(LO 14:30)、17:30~22:00(LO 21:00)
定休日 月曜日(月曜日が祝日の場合は翌火曜日)年末年始
イイヅカアツシ/はぴい
ライター。
フードジャーナリスト。
食べ歩きスターチーム『たべあるキング』メンバー。
著書『iPhone×Movieスタイル』、『カレーの本』。
ブログ『カレーですよ』では13年、5000記事を超える実食カレー記事掲載。