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それでもカレーは食べ物である その5 ジャンル分けはナンセンス。進化するここだけただひとつの欧風カレー 荻窪・吉田カレー

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荻窪駅から数分の青梅街道沿い。

人から聞いて訪ねていったがどうしても店がない。

うろうろしているとA4くらいの小さな看板に気がついた。

肩幅ほどの急な階段を上がるとそこが吉田カレーだった。

 

世の中には日常から少しの間だけ逃れられる場所なんてものがたまにある。

そのカウンターに腰掛ければひととき、トラブルや悩み、面倒から切り離してくれて、うまいものが出てきてそれだけに集中できる場所。

それがここ吉田カレー。

 

シャイな店主の吉田さんとは最近やっとおしゃべりが出来るようになってとても楽しい。

店は彼がひとりでまわしているので忙しそうな彼に声をかけるのをはばかられていたのだ。

静かで落ち着いた店内で吉田さんは淡々と仕事をこなし、お客さんたちはそれぞれ自分の皿と対峙している。

店の空気、カレー、両方に共通して没入感があるのが気に入っている。

カレーとの対峙は自分との対峙、全感覚で皿と向き合う気持ちになるのが心地いい。

さて、注文はシンプルだ。

甘口、辛口とごはんの量を決め、上に乗せるものも好みで追加すればいいだけだ。

「辛口・キーマ・焼きチーズ」などいうチョイスはとてもいい。

 

吉田カレーのカレーソースは基本一種のみ

複雑で多段的ながらきちんとまとまりある素晴らしい味だ。

それを大事にしつつその場所にとどめることなく工夫の日々が続いている。

少しづつ、前へ前へと自店の味を進化させていっているのがわかる。ちょっとだけ癖があって、その癖がクセになる。

たとえば今ならバナナの鮮烈な甘い香りとダシのエッジに引き込まれる。

 

進化という名の変化は大きな価値があるのだ。

初めはいろいろ驚いた。

張り紙やメニューなどにいろいろ面白い文面が並ぶ。

曰く、「当店では普通、中辛は禁句です」

曰く、「お待ちいただけない方、これでも高いと思う方、無愛想な店主に腹がたつ方、駅の方にチェーン店がありますのでそっちへ行ってください」

「人見知りなので絶対話しかけないでください」等々。

まったくおもしろい。

営業の大変さと洒落っ気とがバランスしてにじみ出る。

これを見て眉をひそめるお客をまずはここでふるいにかけられる。

自ずと洒落がわかる面白いよい客のみ厳選される。

そう、シャレなのだ、ただし、半分だけ。

客と店は五分五分という当たり前の立場で頼みごとをしているのだ。

ただ頼むのでは色気もないしつまらない。

そんな思いが感じられる「お願い事項」だ。

これを見てニヤリとできるセンスある人だけに訪ねて行ってもらいたい。

吉田さんはもしかするとおしゃべりしないでも面白さと価値、おいしさを共有できる「共犯者」を作ろうとしているのではないか。

 

だとしたら、私はすでに共犯者だ。

あなたも共犯者になってみるというのはどうだろう。

 


それが欧風なのか、洋食なのか、そんなことはどうでもいいこと。うまければいい。
うまいから通う。代替えがきかない特別なカレーライス。

 

「カレー」650円は破格。甘口と辛口が選べる。ぜひ各種トッピングを。キーマ(250円)と焼きチーズ(100円)のコンビネーショントッピングはおすすめ。とろとろの豚トッピングも試すべきよいもの。

 

[ 吉田カレー ]
住所 東京都杉並区天沼3-8-2 2F
交通 JR中央線、東京メトロ丸ノ内線 荻窪駅 徒歩4分
営業日:月火金 11:30~13:50 17:30~20:00
土 11:30~13:50

 

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イイヅカアツシ/はぴい
ライター。フードジャーナリスト。食べ歩きスターチーム『たべあるキング』メンバー。著書『iPhone×Movieスタイル』、『カレーの本』。ブログ『カレーですよ』では13年、5000記事を超える実食カレー記事掲載。

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