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カレー店に一目惚れ、こんなこともあるのだな、そう思った。
『spicy curry 魯珈(ろか)』は大久保の端にある。
台湾の屋台メシ、魯肉飯(ルーローハン)と南インドのカレー、脈絡なく感じる二つの国の料理が一つの皿に盛り付けられることに驚いた。
こんな挑戦的なひと皿を出すレストランは世界中どこにもないはずだ。
店主の齋藤さんにお話を聞かずにはおれない。
まずは注文を。
カレーは4種用意される。
『選べる2種カレー』はラムカレーとクリーミー野菜コルマカレーを選んだ。
ラム肉の香りが良い方に向いていて食べ応えと満足感が強いラムカレー。
コルマカレーは濃厚。
食欲そそるが重たく感じさせない仕上げにセンスが光る。
『魯肉飯』は甘めの仕立て。
八角が香り、本国を越えんばかりのおいしさだ。
カレー1種と魯肉飯が同じ皿の上に並ぶ『ろかプレート』には魯咖チキンカレーを。
ぴりりと辛め、タマネギの甘みが奥行き深くスパイスの香りが高く、心地よい。
このスパイス香るカレーと甘い豚バラ煮込みを混ぜて食べる至福は未体験の領域だ。
南インドと台湾の味の組み合わせはまったく破綻が見えない。
なんという不思議。
添えられるマスタードオイル高菜はこれぞインドと台湾のハイブリッド。
魯肉飯に必ず添えられる高菜漬け。
それをインドで多用されるマスタードオイルで炒めてあり、魯肉飯とカレーを見事につないでいる。
どの料理もほぼ魔法に近い完成度。
齋藤さんが店を出そうと決心したのは2016年8月。
考えをめぐらせ動き出し実働準備はわずか2カ月、2017年2月に店を開けた。
驚くべきスピード感だ。
カレーの店を持つのは学生時代に決めていたという。
この連載でお邪魔している『エリックサウス』の八重洲店で7年(だから私を知っていたのか)。
その前の鬍鬚張(ひげちょう)魯肉飯でのアルバイト経験(台湾のチェーン。東京にもあった)。
大好きになった2つの店と料理、どうしても自分の味で店をやってみたい、それも両方。
強い想いは強い意志によって形となった。
「店を開けるとき、インドと台湾なんていう組み合わせは受け入れられないのではと思っていました」と笑う。
日本のインドカレー原理主義時代が終わりつつある。
今までは本国そのままが最高とされていた。
「でも、なによりもおいしいのが一番大事ですよね!」と齋藤さん。
素直なのだ。
素直さは諸刃の剣だ。
素直さを通すには意志の力が必要だ。
それを持って動いた彼女は見事にやってのけた。
自分の欲するものを作り上げ、それを世に問うた。
行列が絶えぬ繁盛ぶりがその答えだ。
シンプルであることは勇気がいるものなのだ。
『ろかプレート』(950円)、『魯肉飯』(750円)、『選べる2種カレー』(850円)、各種ドリンクあり。欲張りたい時は追加の『ぷちカレー』(200円/ご飯なし)も。
[ spicy curry 魯珈 ]
住所 東京都新宿区百人町1-24-7 シュミネビル1F
交通 JR大久保駅 徒歩1分
営業時間 現在記帳制。記帳時間昼の部10時、夜の部16時より
定休日 土日祝
https://www.instagram.com/spicycurryroka/
イイヅカアツシ/はぴい
ライター。フードジャーナリスト。食べ歩きスターチーム『たべあるキング』メンバー。著書『iPhone×Movieスタイル』、『カレーの本』。ブログ『カレーですよ』では13年、5000記事を超える実食カレー記事掲載。
https://blogs.yahoo.co.jp/hapii3
iizka3@gmail.com