ほぼ全てのスポーツに「入門書」は存在している。
それは「スポーツ」というものが、
「一定のルールに則って勝敗を競ったり、楽しみを求めたりする身体運動の総称」であり、
誰もがプレイすることが可能なものであるからだ。
しかし、例外はある。
それがプロレスだ。
厳密には「プロ・レスリング」であるから、
レスリングの上級競技者が金を稼ぐという競技でなければならないのだが、
アマチュアで行われているレスリングとプロレスはまったくの別物。
すなわち、プロレスはプロしかいないスポーツなのだ(スポーツであるかどうかの議論はここではしない)。
そして、競技するスポーツではなく完全な鑑賞して楽しむスポーツになっている。
そのため、入門書や教科書というものは存在しなかった……かに思われたが、実は、1981年に“教科書”といえる一冊が発売されていたのだ。
それが『現代プロレステクニック』(タッチダウン社)である。
監修は、当時新日本プロレスの鬼軍曹と言われた山本小鉄である。
その内容は……。
イラストで山本小鉄がプロレスを解説していくというもの。
序盤は、ヒンズースクワットやプッシュアップなどプロレスラーになるためのトレーニングを解説。
さらに受け身、エルボースマッシュなど基本的な技術解説も行っている。
ここからが問題だ。
プロレスでも必殺技=プロレスラーでさえ悶絶し3カウントを奪われてしまうような必殺技まで紹介。
本当にこんなコトまで教えちゃっていいの?
これを見て、ドリル・ア・ホール・パイルドライバーを習得しちゃう少年がいたらどうするの?
今なら問題になってしまいそうな解説がいっぱい。
こんな危険な教科書を出版しちゃうなんて、昭和ってすごい時代だ。