平成という30年を経て令和という時代になろうとも、
昭和という時代に多感な少年時代を過ごした者にとって、
“懐かしい”と思うのは、やはり昭和なのだろう。
昭和の若者のカルチャーを語る上で、絶対に欠かせないのが、
“ツッパリ”である。
本来、社会問題であり、“文化”として讃えるものではなかった。
しかし、横浜銀蝿、なめ猫、さらに『BE-BOP HIGHSCHOOL』(講談社)によって、それらは不良だけのものではなく、多くの人に浸透したことによって“文化”として認められる存在になっていったのだ。
その“ツッパリ”の象徴だったのが変形学生服だろう。
長ランに中ラン、短ラン、
ドカンにボンタン、ボンスリなど、
学校指定ではない、一目で“ツッパリ”と分かる学生服が流行したのだ。
当初は、不良学生だけのものであった学生服は、
次第に学生たちのファッションとして一般学生にまで広まっていった。
ベンクーガーにジョニーケイ、ジョンカーターなど人気ブランドもあり、
男子高校生たちは、バイト代を握りしめ学生服屋に走ったものだ。
それにより、本物のツッパリによる“ボンタン狩り”といった問題も発生したが、
それだけ、決して問題を起こさないような一般学生にまで
ツッパリファッションが浸透していたということだろう。
しかし、80年代後半になると、変形学生服は次第に減り、
あの象徴的なツッパリファッションは、コントや映画、そしてコスプレでしか見ることができなくなってしまった。
街を歩いていても、80年代のツッパリのような変形学生服を着ている学生を見ることはない。
最近ではブレザーばかりで学ランが制服の高校も少なくなってしまったのだ。
もう、短ランやボンタンは絶滅してしまったのだろうか。
昭和の思い出を掘り起こすべく調査をすると、
関東には1軒だけ確認できた。
茨城県日立市にある『学生ショップ一番街』だ。
店内に飾られた一般的な学生服……しかしその傍らには、明らかに異様な長さ、そして太さ、さらに極悪なカラーの裏地があしらわれた変形学生服が陳列されている。
ワタリ80cm、スソ幅18cmの最凶のボンタン『羅将』1万2600円(税抜)
腰上12cmの腹巻ドカン『ブラックデビル』1万1600円(税抜)
圧倒的存在感の長ラン『超ぶっちぎり』2万2800円(税抜)
気合いの短さを誇る超短ラン『ギンギン』1万8500円(税抜)
昭和世代の男子なら、これを見ただけで血が沸き立つだろう。
こんな見るからに極悪な学生服が、時を超え令和の世にも脈々と受け継がれているのだ。
しかしこれだけで懐かしむのはまだ早い。
店長の馬目(まのめ)さんと会話をすれば、もはやその空間が昭和へとタイムスリップする。
馬目さんはツッパリブーム直撃のまさにビーバップ世代。
自身も変形学生服を着ていたため、とにかく詳しいし、ツッパリ話に花が咲く。
ワタリが45cmで、内モモに隠しポケットがあって……。
やっぱり裏ボタンは「愛羅武勇」でしたよね~!
こんな当時の愛好者ならではの話がどんどん飛び出すのだ。
ああ、あのギラギラしていた学生時代にもどったみたいだ……。
既に学生服なんて着ても似合わないのに、本気で品定めしてし、
思い出にボンタンを一本買って帰ろうかなと思ってしまった。
こんな中年オヤジを一瞬で少年へと若返らせてくれる
ボンタンが買える店
は、東日本で唯一、この店しかないのだ。
ウェブショップもあるので、ぜひ一度覗いてみてほしい。
ぶっといボンタン、おかしなくらい短い短ラン、
そして舞台衣装かと思うほど派手な裏地を見れば、
時を超えて心が沸き立つはず!
『学生ショップ一番街』
茨城県日立市幸町1-11-2